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マーケティングの「インサイト」とは?
「インサイト」という英単語を直訳すると、「洞察」や「直観」「物事を見抜く」と訳されます。
全体を把握するとなんとなく直感的に分かる、というような状態を指しています。
マーケティングで近年よく使われるようになった「インサイト」とは、消費者がまだ欲求も感じていない状態での「人を動かす隠れた心理」のことです。
消費者にも認識されていない、無意識の領域での心理です。
無意識というと「潜在ニーズ」と同一に思われがちですが、「インサイト」は「潜在ニーズ」よりもさらに深い心理にある、あいまいなニーズのことを指しています。
例えば、「スポーツが上手くなりたい」という意識の奥には、「異性にモテたい」「友人に勝ちたい」「能力を認められたい」というような、無意識の「「潜在ニーズ」があります。
しかし「インサイト」は、考えても分からないもっと隠れたところにある心理です。
画期的な商品を見たときに「欲しい」という直観や、「予想もしていなかったがこんな商品が欲しかったのだ」という感情、本当は嫌なのに常識だからと意識されない問題点、などが「インサイト」なのです。
「インサイト」が生まれた背景は社会の変化
マーケティングで使われる「インサイト」という考え方は、1960年代のイギリスで発祥しました。
「消費者インサイト」や「顧客インサイト」 などとも言われています。
「インサイト」というマーケティング用語が生まれたのは、消費者があまり物を欲しがらなくなったことが背景にあります。
いくら良い商品を作っても、消費者が商品に興味を持たなくなってきたのです。
いくら良い商品でも欲しい商品とは限らないことや、すでに似た商品を持っているため、購入の必要性を感じないことなどが原因です。消費者が充たされているため需要を感じない、「物が売れない時代」になってきたのです。
そこで、マーケティングにより需要を見つけるのではなく、需要を創造することが必要になってきました。
市場自体を創造する重要性が増してきたために、「インサイト」が注目されています。
1960年代のイギリスでは、同時期に「アカウントプランニング(account planning)」も生まれています。
アカウントプランニングとは、消費者が何を考え何を欲しがっているかを理解して、広告に反映しようという考え方です。
企業からの一方的な押し付けではなく、消費者を主役として考えていこうという時代背景から、「インサイト」が生まれました。
インサイトは3つに分類できる
心の奥に隠れている「インサイト」は、さまざまな意思決定に関係していますが、主に「価値」「不満」「未充足欲求」の3つに分類できます。
ポジティブで好意的に感じているものに対しては、「価値」の心理があります。
「価値」の心理は、なぜそれを買うのか・選ぶのかを探るための、手掛かりとして使えます。
ネガティブで嫌いだと感じているものに対しては、「不満」の心理があります。
「不満」の心理は、なぜそれを買わないのか選ばないのかを探る手掛かりとなります。
今は充たされていないが充たされたいという思いや、こうだったらいいのにと思うのには、「未充足欲求」の心理があります。
「未充足欲求」の心理は、何を充たせば買うのか・選ぶのかを探る手掛かりになるのです。
インサイトに重要な4つの要素とは?
「インサイト」は、客観的で事実(ファクト)に基づいた感情でなければなりません。
情緒(エモーション)のみを重視すると、勘違いで的外れになる可能性があるからです。
このインサイトにおけるフレームワークとして、4つの要素があります。
「情緒」「シーン」「源泉要因」「背景要因」です。
「情緒」とは、気分や気持ち。「シーン」とは、情緒が生まれる場面・行動・状態。
「源泉要因」とは、情緒を生みだした要因。
「背景要因」とは、情緒の背景や理由です。
観客の心を動かすアイディア開発のためには、客観的な事実も必要です。
「情緒」と、「情緒」の要因となった「シーン」「源泉要因」「背景要因」という事実を合わせることで、魅力的なアイディアが生まれるのです。
現在のインサイト市場状況は?
現代は物があふれており、消費者ニーズは充たされています。
ニーズ自体を創造しないと、物が売れない時代になりました。
多くの企業はこの現状を打破するため、企業内にインサイトを行うマーケティング部署をつくり、インサイトリサーチや分析を重要な業務として認識するようになりました。
またインサイトを扱う調査会社や、インサイトのリサーチ・分析を専門とする調査会社も増えてきています。
グローバル企業でのインサイトと成功例
グローバル企業での画期的な商品は、インサイトによるものが多くあります。
例えばアップル社のiPhoneです。
スティーブ・ジョブズ氏は、顧客からの要望によってiPhoneを創ったのではありません。
創作前は誰もiPhoneのようなものが欲しいとは、意識していませんでした。
しかしiPhoneを手に取ってみて初めて、こんなものが欲しかったのだと気が付いたのです。
顧客が意識していない真の要望を捉えることが、ニーズの創造につながり、ビジネスの成功に結びついた例です。
デザイン思考とインサイトの生まれる可能性
企業活動における製品・サービスの開発プロセスにおいて、従来のアプローチよりもインサイトの生まれる可能性があると、注目されているのが「デザイン思考」です。
「デザイン思考」とは、デザイナーでない人々が、デザイナーの思考を活用して試行錯誤することです。
「視覚的に考える」「チームで考える」「拡散と収束の切り替えをする」「顧客を選択する」 などの思考方法があります。
デザイン思考を実践すると、いろいろな場面でインサイトの生まれる可能性があります。
しかしデザイン思考があれば、ロジカル・シンキングが必要ないというわけではありません。
そもそもデザイン思考とロジカル・シンキングは、目指しているものが違うからです。
実際に戦略的にビジネスとして成功させるためには、ロジカル・シンキングが必要です。
デザイン思考とロジカル・シンキングを使い分け、両立することが必要なのです。