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ブランディング

架空のユーザー「ペルソナ」 を想定して、リアルな顧客のニーズを知ろう

企業のマーケティング担当者であれば一度は耳にしたことがある言葉、ペルソナ。

中小企業をマーケティング支援に従事する弊社も、「ペルソナを作成したけど活用できていない」「作成途中で諦めた」「データを集めるのがきつい」などの理由で上手に活用できていないというお悩みの声を多くいただいてきました。

そこで今回は、中小企業におけるペルソナのあり方と作成方法について、一般的なペルソナとの違いを明示しながら解説したいと思います。

架空のユーザー「ペルソナ」とは?

ペルソナ(Persona)とは、商品やサービスにおける架空のユーザー像のことです。

マーケティング手法の一つとしてよく使われ、リアリティのある架空の人物を想定することで、「顧客のニーズの把握」や「社内における共通認識の確立」を目的とします。

ターゲットとペルソナの違い

ペルソナによく似た言葉に、ターゲット(Target)があります。

「ターゲット」と「ペルソナ」は、顧客を想定するという点では共通していますが、ターゲットが大まかなユーザー層を意味するのに対して、 ペルソナは人物の属性だけではなく、ライフスタイルまで細かく詳細に想定していくという特徴があります。

ペルソナを設定するメリット

ペルソナを設定することが得られるメリットは大きく2つです。

①顧客のニーズを満たす商品・サービスの提供ができる

顧客に必要とされる商品やサービスを提供するためには、顧客が本当は何を必要としているのかを知らなければなりません。

そのために顧客のライフスタイルや嗜好・悩みなどを、詳細に設定したペルソナを作成します。

リアルな人物を想定することで、ペルソナが必要とするものや不満、悩みなどを、ユーザー視点で知ることができるのです。

ペルソナの視点で商品やサービスを開発・改善していくことにより、リアルな顧客のニーズも満たせる商品やサービスを提供することにも繋がります。

組織的に効率よくプロジェクトを進めることができる

複数の部署や担当が関わる仕事において、ユーザー像を共有することはプロジェクト成功のために不可欠な要素です。

大まかなターゲット像しかないと、担当者それぞれが考えるユーザー像に大きなブレが生じることになり、その結果ユーザーニーズに合わない成果物が出来たり、担当者毎にアウトプットの品質にばらつきが生まれたりしてしまいます。

ペルソナを社内で共有することは、認識ズレを減らすことにもつながり、効率よくプロジェクトを進める役割も果たすのです。

ペルソナの作成・運用に至れないワケ

ペルソナ作成は、マーケティングやサービス開発においても非常に有効である一方で、ベンチャーや中小企業では正しく作成・運用されていないという実態があります。

中には、マーケティングの重要性は感じながらも、ペルソナをつくるにはハードルが高すぎるというジレンマを抱えられている方もいるのではないでしょうか。

一般的に提唱されているマーケティングにおけるペルソナを作成・運用するには、2つの高いハードルがあります。

データ収集が困難である

まずは、データ収集が困難である、という点です。

ペルソナ作成は正しく顧客のニーズを把握することを目的とするため、顧客へのヒアリングやデプスインタビューなどをもとにした客観的なデータで構成されることが望ましいとされています。

そのためにはデータ収集を行う必要があり、費用や期間、人員を用意して取り組まなければなりません。

ペルソナ作成を外部へ委託する場合、30万~100万円が相場とされているため、データ収集を自社で行うとしても決して安くないコストがかかることが分かります。

さらに、費用や期間、人員が確保できたとしても環境やスキル面で正しいデータ収集が行えない場合もあります。ヒアリング可能な顧客数が十分でなかったり、ヒアリング担当のスキル不足、ヒアリング項目の質が悪かったりするなど、環境やスキル面の不足により誤ったデータを収集してしまう可能性があるからです。

社内への共有がされず、形骸化する

社内への共有がされず、ペルソナが形骸化するというのもよくある失敗要因です。

「どのように業務に落とし込んでいけばよいのか分からない」「担当者へ共有したけれど伝わっていない」状態が続くと、せっかく作ったペルソナが運用されずに終わってしまいます。

また、社内への共有が進まず形骸化する背景には、ペルソナの完成度に対する疑問視も挙げられます。要は、データ収集を行っていない、主観的な考えでまとめられたペルソナ設計書は、根拠がなく説得力が弱いということです。

このようにしてペルソナが徐々にマーケティング活動から除外され、最終的には「ペルソナには意味がない」というネガティブな印象を持たれるようにもなってしまいます。

簡易ペルソナから始めるペルソナマーケティング

そこで本日お伝えしたいのが、簡易ペルソナという概念です。

簡易ペルソナは、前提として客観的でないデータをもとに設定することを良しとするものであるため、小さなチームの中で共通認識を持ち合わせてマーケティング活動、営業活動、改善活動を行っていくのに役立ちます。

ペルソナと簡易ペルソナについて違いを整理しながら、簡易ペルソナから始めるマーケティングを解説いたします。

ペルソナと簡易ペルソナの違い

ペルソナと簡易ペルソナは似て非なるものです。以下にそれぞれの目的と概要をまとめておきます。

名称目的概要
ペルソナ商品・サービスの典型的な顧客像を深く理解する客観性のあるデータをもとに設定し、より実在する人物に近いイメージで作成する
簡易ペルソナ商品・サービスの立ち上げや初期フェーズでマーケティング施策の方向性を掴む主観や経験などを用いて設定することを許可し、人物像を想像しながら作成する
ペルソナと簡易ペルソナの違い(作成:エニィ磯崎)

大きく異なる点として客観性(ペルソナ)と主観(簡易ペルソナ)があります。

中小企業やベンチャー企業で、事業の立ち上げや方向性を掴むことのほうが重要度が高い場合、ペルソナ作成に時間やコストをかけるよりも、簡易ペルソナのほうが適切であることがわかります。

また、どちらも「リアルな顧客像をイメージする」ために、顧客視点で考えなければいけないという点は変わりません。

簡易ペルソナの注意点

簡易ペルソナは主観的に作っても問題ないということでコスパの良い側面がある一方で、性質的に共感するのが難しく、形骸化していきやすいものでもあります。

そのため、以下の4つの点によく注意して、定期的にコミュニケーションを行うことが望ましいです。

①主観的な記載であることを明示的にする
②必要な情報だけに絞って設定する
③全員がイメージできる人物像にする
④定期的にブラッシュアップする

簡易ペルソナは、初期状態は精度が高いとは決して言い切れないため、運用しながら精度を高めていく取り組みを続けなければなりません。

作成時に客観的でない思考で設定した項目は資料などで明示的にしたり、事業運営の意思決定に必要な項目に絞って作成・運用することがコツです。

また、運用においても関係者のイメージを揃え、定期的にブラッシュアップしていくことにより、日頃のブログ作成やコンテンツマーケティング、セミナー内容や営業活動などからも新しい気付きや深い洞察を生み出すことが出来るようになります。

(この組織の体質改善やコミュニケーションの習慣化が一番難しいのですが。。)

簡易ペルソナの作り方

ペルソナを構成する2つの属性

ペルソナを作成する際の切り口には、大きく分けると「デモグラフィック(人口統計学的属性)」と「サイコグラフィック(心理学的属性)」の2つがあります。

デモグラフィックデータの例

氏名・年齢・性別・職業・仕事内容・勤め先・役職・年収・学歴・既婚か未婚か・家族構成・居住地・健康状態・使える金額など

サイコグラフィックデータの例

趣味・関心があること・休日の過ごし方・好きなお店・好きなブランド・よく見るTV番組や雑誌・好きなSNS・好きなWebサイト・携帯デバイスやパソコン・好きなタレント・習慣

デモグラフィックデータが人口統計学的な属性データのことを指すのに対し、サイコグラフィックデータはユーザーの価値観や購買動機などの、個人の内面を表す情報のことを指します。

ペルソナの日常生活パターンを探りたいときはデモグラフィックデータを分析し、顧客が本当にほしいもの(インサイト)を見つけたいときはサイコグラフィックデータを分析するという使い分けです。

多様化した情報ニーズを捉え、顧客が本当にほしい商品やサービスを提供するためにも、この2つの属性のデータを上手く整理・分析

ペルソナの設定項目

ペルソナマーケティングを行うには、典型的だと思われるユーザー像「ペルソナ」を想定します。

ペルソナは思い込みや独断で決めるのではなく、ターゲット分析や収集したデータから人物像を導き出します。

BtoBとBtoCの場合では、設定すべき内容が一部異なります。

企業間取り引きであれば役職は重要な項目となりますが、BtoCの場合には役職はあまり重要な項目ではありません。

以下がペルソナ設定の項目例です。

  • 年齢
  • 性別
  • 居住地
  • 最終学歴
  • 職業
  • 勤め先(役職や仕事内容)
  • 年収・貯蓄額
  • 人間関係(友人など)
  • 配偶者・家族構成(恋人の有無)
  • 性格
  • 趣味・興味のあること
  • 生活パターン(1日の時間の使い方)
  • 消費行動
  • 価値観
  • 口癖・悩み
  • 本・雑誌・新聞の閲覧頻度
  • 情報の入手先(Webサイト・TV)
  • インターネット利用状況(閲覧時間・所持している携帯デバイス)

簡易ペルソナであることの明示

まとめ:ペルソナのハードルが高いときは簡易ペルソナから始めよう

この記事を書いた人

クリエイティブ・ディレクター / コピーライター 磯崎史弥

企画設計を得意とするクリエイティブ・ディレクター兼コピーライター。 Webコーディングから制作業界へ入り、2020年にエニィへ入社。以来、Webディレクションを中心に、中小企業のブランディングやマーケティング支援に従事。担当した案件では、LPからの申し込み数が0件/月→50件/月。新規顧客数が60名/月→100名/月へ貢献など成果実績あり。中小企業の支援実績が豊富。2025年現在は、自社サイトの設計・コンテンツ制作もメインで担当しています。

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