ブランディング
技術力のみでは置いてけぼり?求められるデザインシンキングの考え方とは
多くの企業や個人が必要以上の情報を発信することで情報氾濫が起きている現代。有益な情報を入手するうえでの取捨選択が常に行われているだけに、単にクリエイターの技術力だけをアピールする見た目重視のWEBサイトではユーザーの真の興味を引くことは難しいでしょう。WEBサイトにおいてビジュアルを形成するデザインは不可欠な要素ですが、その思考やコンセプトの部分がよりフィーチャーされるようになった点は見逃せない事実です。
近年、デザインは意匠性だけでなくサイト設計の根幹を担い、顧客の課題解決を実現する鍵にもなると考えられています。また、現在のビジネスにおいて、この考え方を活かした「デザインシンキング(デザイン思考)」や「デザインコンセプト」が多くの場面で応用され始めており、大企業でも率先して事業に取り入れているケースもあるようです。「デザイン=見た目」という固定観念を覆す、デザインに対する真の考え方とは。
H2求められる「デザインシンキング」「デザインコンセプト」とは?
多くの方はデザインを「装飾」の意味として捉えているかもしれません。しかし、実はそうした意匠性の意味合いよりも強いのが「設計」という側面です。キレイなビジュアルを作り出すことはもちろんですが、プロダクトの緻密な論理立てを行うこともまたデザインの要素だと言えます。つまり、デザイン制作は、顧客のビジネスをビジュアルで体系化することでもあるのです。
物事をロジカルに、そして建設的に考えるうえでは思考の整理が欠かせません。そのために役立つのが「デザインシンキング」や「デザインコンセプト」です。デザインを起こすうえで重要となる思考や概念をビジネスに落とし込み活用する考え方を指します。デザイナーたちが自然と実施しているプロセスを体系化することで、思考や概念に関する情報の落とし込みがよりスムーズになったり、新しいアイディアの創出につながったりするなどの効果が期待できます。
H2 デザインシンキングのプロセス
デザインをビジネス活用するうえでは、まずデザインシンキングのプロセスを学ぶことが先決です。思考回路を明確にすることは、デザインだけでなく多くの仕事に活かせます。プロセスを学び、ロジカルに物事を捉える訓練をしましょう。
【デザインシンキングの5つのプロセス】
プロセス1:観察・共感
まずはターゲットを定め、そのユーザーのありのままを観察します。観察によってユーザーの背景や課題を可視化します。ここで忘れてはいけないのが、「ユーザー目線」です。ユーザーの視点に立ったうえで課題に向き合うことで、多くの気づきと共感を得ることができるでしょう。
▼
プロセス2:問題定義
プロセス1で気づいた課題を深掘りし、ユーザーも把握していないコアな問題を発見します。そのうえで、「解決しなければならない問題」と「問題を解決し将来的に実現したい目標」を定義します。このプロセスはその後の方向性を決定づけるため、慎重に思考を重ねることで確度を高める必要があります。
▼
プロセス3:アイディア抽出
プロセス2で割り出した問題を解決し、目標を達成するためのアイディアを抽出します。ブラッシュアップは後の工程で行うため、この段階では精度は気にせず、なるべく多くのアイディアを考えることが大切です。
▼
プロセス4:プロトタイピング
抽出したアイディアを検証するため、プロトタイプを作成します。案を出している段階では曖昧だった部分を具現化することで、よりイメージがつかみやすくなるでしょう。また、プロトタイプ作成により別の課題発見や新たなアイディアの創出も期待できます。
▼
プロセス5:検証
プロセス4で作成したプロトタイプを実際にユーザーに使用してもらい、機能が想定通りに動くかをチェックします。もし想定通りとならなかった場合はプロセス3まで戻り、改善と試行錯誤をくり返しながら、精度の高い成果物を作り上げます。何度試しても検証がうまくいかない場合、「問題定義」に問題がある恐れがあるため、プロセス2まで立ち返る必要があるでしょう。
デザインシンキングは多くの場合、プロセスが一方通行にスムーズ進むことはありません。何度も「問題定義」や「アイディア抽出」に立ち戻り、試行錯誤を重ねながら完成度を深めていくことが、デザインシンキングの基本となります。
H3 デザインシンキングの手法の紹介
「デザインシンキングを実際の作業に応用したい」と思っても、実践レベルで何をすれば良いのか分からない方もいるでしょう。そうした場合は、まずは代表的なフレームワークを試してみましょう。デザインシンキングには主に以下の手法があります。
ブレインストーミング 複数人でアイディアを出し合い、斬新な発想を生み出すことを目的とした会議手法。通称はブレスト。
グラフィックオーガナイザー 情報の関連性を視覚的に表現し、体系的・組織的に学ぶことで記憶をサポートする手法。
コンセプトマッピング アイディアや知識などさまざまな概念の関係性を視覚化し、受け手の理解を促進する手法。
狩野分析法 品質を分類して整理する手法。要件定義する際や優先順位をつける際に役立つ。
ラダリング法 プロダクトの価値構造を掘り下げることで、思考や行動の価値を明らかにする定性分析手法。
ラブレター&ブレークアップレター法 プロダクトに対する考えを手紙で感情的に表現する調査手法。感情的価値の理解に役立つ。
ストーリーボード ユーザーニーズを理解・共有するために、ストーリーをマンガや絵コンテで表現する手法。
スターバックスコーヒーでMacを使っていると、「仕事ができる人に見える」という印象を持ったことがある人もいるでしょう。スタバでMacがなんとなくカッコいいから、MacのPCを購入するという事象は市場が自己実現的消費に向かっている証拠です。モノが「あれば良い」というただただ「消費する時代」から、考えて感じて自身の趣向で選ぶ「選択の時代」へと移り変わってきています。それだけにデザインシンキングで思考を体系化することは、プロダクトを整理するうえで非常に重要なのです。
H3 デザインシンキングの活用例
デザインシンキングの代表的な活用例として挙げられるのが、Apple社が開発した「iPod」です。AppleはiPodの開発に際して、まずはユーザーの動向を徹底的に観察・調査。その結果、「PCを使いCDから音楽プレーヤーに楽曲を移すのが面倒」「どんな場所でも好きな音楽を聴いていたい」というユーザーニーズを発見しました。
Appleはユーザーニーズを軸に、「移動中も気軽に音楽を聴けるアイテムを作る」「音楽の聴き方を変える」というゴールを策定。クリックホイールやauto-syncなどの革新的なアイディアが生まれました。そして、わずか2ヶ月で100を超えるプロトタイプが作られ、ブラッシュアップを重ねた結果、世界中でメガヒットを記録したミュージックプレーヤー「iPod」が誕生しました。このiPod誕生を支えた思考回路こそが、デザインシンキングなのです。
【Pick Up!! そもそもデザインとは何?現在の解釈を紹介】
デザインシンキングを知るためには、そもそもの「デザイン」についても深く理解する必要があるでしょう。「デザイン」という言葉は20世紀初頭に使われ始めてから約100年の歳月が経ち、言葉の持つ意味も変化しています。冒頭で紹介したように、「デザインは見た目を良くするための手段」という解釈は、本質から外れていると言えるでしょう。
デザインの語源は、「Designare」というラテン語だとされています。この「Designare」は「計画を図面に書き表す」という意味で使われていたとされ、当初からデザインという言葉には「設計」という意味が込められていました。
デザインは、ユーザーや社会のニーズを中心とした設計が行われる点が特徴です。「社会は何を求めているか」「ユーザーに強く印象づけるには何が必要か」などの課題を、顧客目線で追求。顧客のニーズを満たすことを目的に計画を立案・具体化させ、より洗練された成果物を作り上げていくプロセスこそが「デザイン」の本質なのです。
H2 高いデザイン性実現のため、鍵を握る「視点」
デザインはニーズをもとに設計されているため、優れたデザインを構築していくためには「ユーザー視点」が鍵を握ります。クリエイターが「高いデザイン力を発揮した」と自負しても、ユーザーから同様の評価を得られなければ単なる自己満足です。ただし、ユーザーを中心とした設計は決して簡単ではありません。ユーザー視点を心がけても、無意識のうちにクリエイターの考えが入り込み、都合の良いユーザー像を作り上げてしまう危険性があります。そこで取り入れたいのが、「ペルソナデザイン」です。
H3 ペルソナデザインによって得られる効果
「ペルソナ」とは、商品・サービスを利用する層を想定して作られた架空のユーザー像です。年齢・性別・居住地・職業・役職・年収・趣味・価値観・メンタリティー・家族構成・休日の過ごし方など、詳細な情報をペルソナに設定することで、実際にユーザーがWEBサイトにどのメディア経由で遷移し、どのような行動を取るかなど緻密なシミュレーションが可能になります。
また、ペルソナデザインにより、現在できることの把握だけでなく、ユーザーニーズを発見できることも大きな利点です。ユーザーニーズが見つかれば、デザインシンキングによって解決案を具体化させ、より洗練された成果物を作り上げることにつながります。
H3 デザインによって気づかされる今まで持っていなかった視点
デザインはユーザー視点を取り入れることが必須ですが、今まではなかった視点に気づかせてくれるのも「デザインのチカラ」だと言えます。例えば、デザインシンキングを実践する過程において、思わぬ論理的な構図が見えてくることもあるでしょう。デザインにおいて感性はもちろん重要ですが、ロジカルアプローチによる理論構築が鍵を握ります。つまり、ロゴス(論理)とパトス(共感、情熱)の両方の側面を持ち合わせることが重要になるのです。
プロダクトをデザインする際も、ロゴスを軸とした「実質的価値」とパトスによる「情緒的価値」の双方を加味することが求められます。例えば、スタバにおいても店舗経営、売上向上の施策、コンサルティングなどが実質的価値であり、象徴的なアートオブジェを置いて店舗の世界観を表現するのが情緒的価値です。両軸の視点でデザインと向き合って深堀していくことで、常に新しい発見や気づき、ユーザーの反応が見られるでしょう。
H2 デザインシンキングによって機能するコンサルティング
■title
技術力のみでは置いてけぼり?求められるデザインシンキングの考え方とは|株式会社エニィ
■keywords
デザインシンキング,デザイン思考,デザイン制作,デザインの価値
■description
みんなの「いい感じ」をかなえるために。依頼主様、ユーザーと関わった人みんなが幸せになるための制作を行う株式会社エニィのコラムページです。今回は「今求められるデザインシンキングの考え方」について紹介します。ビジネスには技術力だけでなく「デザインシンキング」が求められます。
■h1
今求められるデザインシンキングの考え方|株式会社エニィ
デザインの価値は、WEBサイト上の見た目によってユーザーのプロダクトを印象づけるだけではありません。デザインシンキングによってトライ&エラーをくり返しながら、ユーザー視点をより深く理解し、事業や関わる人の人間性などさまざまな角度からの意見を抽出することで1つのコンセプトを提案します。
デザイン性はビジネスと大きくリンクしており、デザインを設計する過程においておのずと顧客ビジネス理解も進みます。デザインシンキングの精度を高めれば、それだけコンサルティングも機能していくでしょう。だからこそ、現在のビジネスでは、技術力だけでなくデザイン思考を持ったうえで、顧客やステークホルダーたちと向き合うことが求められるのです。
エニィでは、多くの企業から信頼を培ってきたノウハウを根拠として、公開しています。ダウンロードコンテンツ(リンク)もぜひご覧ください。
無料相談を希望する
話を聞いてみたい、相談したい方はこちら