インターネットが普及した現在では、自社のWEBサイト保有が当たり前になりつつあります。
それだけに今後は、WEBサイトによっていかに他社と差別化を図れるかが焦点となってくるでしょう。
つまり、「戦略的にサイトを制作し成果を出すこと」により重きが置かれる傾向にあるのです。
パーツとしてのデザインやコーディングに力を入れることももちろんですが、同時にブランディングや設計によって企業の根幹を表現し、ビジネスを最大化する制作にも注目しましょう。
ではデザインやコーディングなどを単品発注する「デザインインスタンス」と企業価値を可視化する「ブランディング」では、制作においてどのような違いがあるのでしょうか。
自社に必要な制作ニーズを把握したうえで、それぞれの要件に合った制作会社を選ぶことが大切です。
WEBサイト制作でブランディング・サービス設計・プロダクト開発を行う意味
検索エンジンの発展によりインターネット上で情報をすぐに入手できる昨今では、画期的なサービスが生まれるとすぐに類似のサービスが生まれる傾向にあります。
多くの企業が同じサービスに参入することでコモディティ化が進み、なかなかその企業独自の魅力が伝わりにくくなってしまいます。
「ユーザーのためになる画期的なサービスを作ったのに」と嘆いても、多くの類似サービスに埋もれて日の目を浴びることがなければ、それは宝の持ち腐れと言えるでしょう。
つまり、サービスの価値をいかにユーザーに伝えられるかがビジネス成功の鍵を握るのです。
数ある競合他社の中から選ばれる企業になるためにも、自社のサービスに付加価値を感じてもうための差別化戦略が重要となります。
それはWEBサイト制作においても例外ではありません。
WEBサイト制作においても企業独自の魅力を余すことなく伝えるためには、サービス設計・ターゲティング・プロダクト開発といった細やかなブランディング戦略が求められます。
「本当に必要とされるプロダクトか」「ターゲットユーザーのニーズを満たしているか」などを踏まえて綿密なプランニングができているかが、制作物の出来を大きく左右すると言っても過言ではないのです。
プロダクト開発などの戦略を踏まえて作られていないWEBサイトが多い中で、インサイトにダイレクトにつながる一貫した開発ができれば、他社との違いを明確に示すことができるでしょう。
単発の制作とブランディングを意識した制作の違い
デザインやコーディングの制作を単発で依頼する最大のメリットはコスト面です。
必要なクリエイティブを必要な分だけオーダーすることで、サービス設計・ターゲティング・プロダクト開発まで一貫して制作するブランディングよりも当然費用を抑えられます。
また、クライアント自身がすでに綿密なマーケティング戦略を練っている場合、その検証をスピーディに実現できます。
一方、サービス設計・ターゲティング・プロダクト開発から行うブランディングを伴う制作は、「誰に何を伝えたいのか」を明確にするところからスタート。
市場調査からビジネス設計を行い、特定のユーザーにターゲットを絞り、分かりやすくかつアクションを起こしやすいように文字の配置、ワード選び、導線の設置場所なども細かく検証します。
こうした細かい設計により伝えたいことを的確にターゲットに届けられるため、ブランディングを意識した制作ではファンの獲得や成約率において一日の長があると言えます。
「見た目は良いけど効果が感じられない……」「作ったはいいがSEOの流入が増えない……」といった課題が散見される場合は、“ただ作るだけ”の制作物に終始しているのかもしれません。
単発の制作にしても、ブランディングを意識した制作にしても、サービスの価値をきちんと伝えられるWEBサイトに仕上げることが大切です。
ブランディングを行うWEBサイト制作会社の選び方
WEBサイト制作を行っている会社は世の中に数多く存在するので、きちんと自社に合う業者を見極める必要があります。
ではその際にどんな点に注意すべきでしょうか。以下の項目は最低限、確認しておきましょう。
その1:見積額の理由に納得する
WEBサイト制作は、ある程度の経験やデザイン技術があれば個人でも請け負えます。
そのため、価格だけで業者を選定すると失敗する危険性が高まるでしょう。反対に見積もりが高いと感じる制作会社には、その理由を必ず尋ねてみてください。
その要因がサービス設計・ターゲティング・プロダクト開発などのブランディングを含めた制作であれば、値段だけで一概に高いとは言い切れません。
安いか高いかではなく、「その金額で何が対応できるのか」に着目しましょう。
その2:制作会社の特色を理解する
インターネットで少し調べただけでも多くのWEBサイト制作会社がヒットしますが、それぞれの特徴を理解することが大切です。
個性的なデザインがウリの会社、SEOの造詣が深い会社、ユーザビリティ設計に強い会社、経営戦略や企画立案に秀でている会社など特徴は異なります。
とにかくカッコいいデザインを作りたいと考える方が、SEOを重視する会社に依頼してもミスマッチが生じるでしょう。
自社のWEBサイト制作と活用する目的に制作会社のカラーが合っているかの見極めが重要になります。
その3:掲載されている事例や実績を確認する
制作事例は、その会社の特徴や実力を把握するうえで重要なヒントとなるので、しっかりチェックしましょう。
業務提携の契約上、守秘義務で掲載できないケースもありますが、過去の制作物のすべてが見せられないというケースも稀です。
個別でお問い合わせをしたり、資料請求したりしても具体的な実績が分からない場合は注意しましょう。
事例や実績が少ない場合は、信頼に足る会社なのかをしっかりヒアリングしてから最終的な判断を下すことが大切です。
ディレクターと制作者間での共有が重要なCI・VI・BIや経営哲学の共有
デザイナーやエンジニアの腕が良ければ良いほど、制作の本質を的確に理解できる傾向があります。
なぜなら、顧客のサービスを理解したうえでクリエイティブに反映し、ビジネスの最大化に貢献できる人こそが一流であると考えられているからです。
ただ、そうした一流のクリエイターであっても、何の事前情報もなしに顧客の理想とする制作物を作れるわけではありません。
依頼者であるディレクターから事前にCI・VI・BIや経営哲学の共有を受けることが大切です。
CI……コーポレートアイデンティティ(Corporate Identity)の略称。企業の価値観やらしさなど抽象的なイメージを可視化・言語化することでブランドに昇華させること
VI……ビジュアルアイデンティティ(Visual Identity)の略称。企業やプロダクトのイメージをロゴやデザインなどビジュアル(見た目)で表現すること
BI……ブランドアイデンティティ(Brand Identity)の略称。企業の特徴や個性などを明確にし、プロダクトの価値を思想によって具現化すること
デザイナーやエンジニアが制作をするうえで企業の本質(CI)を理解することは大前提だと言えます。
どんな企業で何のプロダクトをウリにしているのかも分からない状態で良いデザインやコーディングができるはずもありません。
また、企業特有のVIやBIを理解することによって、どんな軸でデザインやコーディングを行うかがより鮮明になってくるでしょう。
CI・VI・BIを基本とした経営の哲学を理解することは、制作者がクリエイティブを発揮するうえでのいわばスタートラインに立つことだと言えるでしょう。
ブランディングに強い企業の成功事例
WEBサイト制作においてブランディングが成功の絶対軸ではありませんが、CI・VI・BIなどブランディング要素まで踏み込んだうえでのクリエイティブは一貫した強みがあります。
世界でも有名な企業などはそうしたブランディングが巧みであり、自社の魅力を的確に伝える戦略が功を奏したと言えるでしょう。
ここではブランディングに強い企業の2つの成功事例を紹介します。
事例1:スターバックスコーヒー
コーヒーショップチェーンの中では高単価でありながら、老若男女問わず多くの利用者から愛されているスターバックスコーヒー。
この世界一有名なカフェは、「人々の心を豊かで活力のあるものにするために――ひとりのお客様、1杯のコーヒー、そして1つのコミュニティから」をミッションに掲げています。
スタバでは「人の心の豊かさ」を主役と捉え、「コーヒー」はそれを引き立てる脇役と考えていることが印象的です。
そして、それは現在に至るまで3回変更があったロゴからも読み取れます。
2011年に行われた3回目のロゴの変更ではCOFFEEの文字が消え、セイレーンのみが大きく描かれたデザインに変わりました。
スタバは「コーヒービジネス」ではなく「人間ビジネス」であることを明示した象徴的な出来事だと言えます。
また、スタバはアルバイトを含め従業員の育成や研修に力を入れていることでも有名です。
アルバイトでも80時間の教育を施し、コーヒーの基礎知識や淹れ方をしっかり教え込むことでインナーブランディングの強化を図っています。
「顧客に選ばれ続けるためには、スタッフから」という思想が根づいているからこそ、スタッフのサービス品質が向上し、それが顧客の満足度を高めることで企業イメージ向上を実現しているのです。
事例2:北欧、暮らしの道具店
「北欧、暮らしの道具店」は、株式会社クラシコムが運営するECサイトとオウンドメディアが一体となったメディアです。
消費者に直接商品をアピールするのではなく、有用な情報を提供することで間接的に商品に興味を持ってもらう手法の先駆けとして知られています。
「売るものありきのコンテンツ」ではなく、「習慣的かつ能動的にサイトに遊びに来てもらうことを意識したコンテンツ」を作ることをメディア内で徹底。
スタッフ全員が主担当業務と並行してコンテンツ制作に関わるという会社全体でECサイトのメディア化に取り組んでいる点も注目ポイントだと言えるでしょう。
また、「北欧、暮らしの道具店で扱っているものは生活雑貨であり、なくてはならない生活必需品ではない」という点に着目し、買いやすさよりも面白さを重視しているのも特徴。
ECサイトは「ユーザビリティを考えて買いたい時にすぐに買えるように」というのが一般的でしたが、時にはユーザビリティを無視する逆転の発想が他との差別化につながることを示しました。
事業に必要なクリエイティブを見極めよう
それぞれの企業で自社の事業に必要なクリエイティブは異なります。
一口にWEBサイト制作と言っても、単発の制作と上記のようなブランディングを意識した制作など企業によって要望はさまざまです。
それゆえに事業に必要なクリエイティブを的確に見極めるうえでもブランディングの観点を取り入れることは、大きな武器になるでしょう。
エニィにもクリエイティブの成功事例があります。
ある会社の展示会を支援した際に、クリエイティブ強化によって客入りが激増し、必要な販促物は昨年比の倍以上になり、規模も拡大することができました。
営業の方に「サービスへの愛着が湧き、売りやすくなった」とのご意見をいただくなど、正しいクリエイティブの提供がビジネスの最大化につながることを実感しています。
単品発注のデザインインスタンスにおいても、ブランディングや設計から携わる制作においても、ただ作るだけで終わる制作に留まってはいけません。
意図のない制作や見栄えだけを意識した制作では、結局は事業の役に立たないケースも少なくないのです。
それだけに事業理解を徹底的に深め、クリエイティブの方向性をしっかり見極め、その要件に合った制作会社の選ぶようにしましょう。