MVPの歴史と本来の目的、正しいMVPの基礎知識
AIやICT技術の進化により、DX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みが加速しています。 そんな中、新規事業の立ち上げや起業に携わる方なら、一度はこう感じたことがあるのではないでしょうか。
「いきなり多くの機能をもった完成品を目指すのではなく、必要最小限から始めて、市場のニーズを確かめながら育てていきたい」
この課題に対する答えが、MVP(Minimum Viable Product)です。 本記事では、言葉の定義や歴史的背景、そして多くのプロジェクトが見落としがちな「本来の目的」について解説します。
MVPとは何か?
MVPとは「Minimum Viable Product」の略で、直訳すると「実用最小限の製品」となります。 一般的には、「顧客価値があり、利益を生み出せる最小限のもの」と定義されます。
従来の開発手法では、完成品を作り上げてから市場に出すのが一般的でした。しかし、それでは「作ってみたけど誰にも使われない」というリスクが高すぎます。 そこで、実用最小限の機能を持ったMVPを作成し、
- ターゲットのニーズを満たすか検証する
- その結果をもとに改善する
- また検証する
というサイクルを回しながら、正解に近づいていくアプローチが主流となりました。
「単なる実験」か「勝ちパターン」か
ここで重要なのが、MVPをどう捉えるかです。単に「機能を削った試作品」と捉えるだけでは不十分です。
- 単なるMVP:機能の実験で終わり、次につながらない
- 勝ちパターンになるMVP:価値の検証から、仕組み化・伝わり方の設計までつながる
エニィでは、後者の「勝ちパターン」を以下の掛け合わせで定義しています。
「価値の見える化」×「成果につながる仕組み化」×「お客様に届く伝える力」
MVPは、この勝ちパターンを見つけるための最初の一歩なのです。
MVPの歴史:シリコンバレーでの誕生
MVPは、シリコンバレーで生まれた起業手法「リーン・スタートアップ(Lean Startup)」の核となる概念です。
提唱者であるアメリカの起業家エリック・リースは、自身のスタートアップでの失敗経験や、スティーブ・ブランクの顧客開発モデルから影響を受け、この手法を体系化しました。
スティーブ・ブランク自身、過去に「調達した資金を、プロダクトのリリース前に全て使い果たす」という手痛い失敗を経験しています。 「机上の空論で完璧な計画を立てるのではなく、顧客の声を聞きながら修正していくべきだ」 こうした教訓から、以下の原則が生まれました。
- 事前に実用最小限の製品(MVP)をリリースする
- 顧客からのフィードバックを得ながら学習(Learn)する
- 改善とピボット(方向転換)を繰り返す
つまりMVPの歴史的背景には、「一発勝負のギャンブルを避け、学びを最大化する」という切実な目的があるのです。
MVPを作成する2つの目的
では、なぜMVP開発を繰り返す必要があるのでしょうか。目的は大きく2つあります。
1. 市場でのプロダクト検証(価値の見える化)
開発者が「これは売れる」と思ったものが、顧客にとって「欲しいもの」とは限りません。 誰にも欲しがられないプロダクトは、一銭の価値も生みません。
市場にMVPを出すことで、以下のリアルな反応が得られます。
- ターゲットがどう動くのか
- どんな場面で使われるのか
- どんな不満が出るのか
このフィードバックを通じて、顧客が何に価値を感じているかを言語化(価値の見える化)することが、第一の目的です。
2. PMF(Product Market Fit)の達成
PMFとは、プロダクトが市場に適合し、受け入れられている状態を指します。 代替品の存在や価格設定のズレなど、開発が頓挫する要因は無数にあります。 最小限のリソースでMVPを作成し、市場とのズレを修正しながらPMFを目指すことで、時間や資金の無駄を防ぐことができます。
ここで「勝ちパターンになるMVP」を目指す場合、PMFを単に「ユーザーがいる状態」とするのではなく、
- 収益構造やリピートにつながる「仕組み」
- その価値が正しく伝わる「メッセージ(伝える力)」
これらがセットになっているかまで検証することが、最終的なゴールとなります。
まとめ:「勝ちパターン」につなげるために
MVPは、小さく始めることでリスクを抑え、成功確率を高める有効な戦略です。 しかし、ただ「小さく出せばいい」わけではありません。
- 顧客の反応から 価値の見える化 を行い
- その価値を再現する 成果につながる仕組み を整え
- お客様に届く 伝える力 までを設計する
ここまで見据えて初めて、MVPは成功への架け橋となります。
では、具体的にどうやって「勝ちパターンになるMVP」を作ればいいのでしょうか? 実は、いきなりバズらせようと突飛なリリースをしたり、いきなりシステム開発をしてはいけません。 その具体的な手順と、多くの企業が陥る「機能開発の罠」については、次の記事で詳しく解説します。
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