マーケティングの分野でよく耳にする「ペルソナ」は、ターゲットとなる人物像を様々な要素から「架空の人物」としてつくり上げるものです。
そうすることにより、社内におけるターゲット像の共通認識を図ることが可能になるため、多くの企業で取り入れられている概念です。
しかしながら詳細なペルソナ設定を行ったとしても、ターゲットとなるペルソナの具体的な行動を把握することは難しく、またペルソナの購買行動が予想外の動きを見せた場合にはその対応に追われてしまう場合があります。
こうしたケースは、ペルソナの動きを時系列に把握できていないがために起こるもので、準備をしておけば予め防げた可能性が高いのです。
今回はこうしたペルソナの行動を時系列に把握し、フェーズごとに施策を打ちやすくなる「カスタマージャーニーマップ」の作成について書いていきます。
カスタマージャーニーの作成は自社サイトのKPIに対する施策の参考にもなるため、Webマーケティング担当者には必須の知識となるでしょう。
顧客の行動の全体像を掴むカスタマージャーニーとは?
カスタマージャーニーとは「顧客の旅」のことを指します。
つまり「カスタマージャーニーを作成する」ということは、顧客となるペルソナが商品の認知を行う段階から比較検討の段階に入り、そして購入した後に評価の段階に入るといった「顧客の行動」を把握することに当たるのです。
カスタマージャーニーを作成することで、顧客の行動段階ごとの状態が把握できるようになるため、マーケティング戦略における必要な施策も予め分かるようになります。
顧客の行動を「旅」として捉える
カスタマージャーニーは、その名の通り顧客の行動を旅として捉えることです。
例えば、ターゲットとなるペルソナが「海外1人旅を計画している女性」で「Booking.com」を利用する場合、まずは計画を練っている段階に行う行動を洗い出す必要があります。
宿泊の候補を探す段階では「通常検索」や「友人の紹介」、「宿泊者のレビュー」などが顧客の行動として考えられます。
その時の顧客の心理状況には「女性1人でも安心して泊まれるのかな?」という不安があると仮定できます。
カスタマージャーニーの作成では、こうした顧客の段階ごとの具体的な行動や思考・感情の浮き沈みなどの情報を追加していき、顧客の行動の全体像を掴んでいきます。
カスタマージャーニーの作成にはペルソナ設定が不可欠
カスタマージャーニーを作成するためにはペルソナの設定が不可欠です。
商品やサービスの購入者が具体的にどういった人物かを明確にすることで購買行動をより把握しやすくなります。
ペルソナは正確であることが重要ですが、初めてカスタマージャーニーを作成する際には完璧を求めずとりあえず作成してみましょう。
その後、想像で設定したペルソナ像やカスタマージャーニーは実際の行動と異なる場合が多いため、「顧客アンケート」を取るなどして修正するのがおすすめです。
カスタマージャーニーを作成するメリット
カスタマージャーニーが注目されるようになった背景には、顧客の購買行動が日々の電子体験により多極化したことにあります。
日々の購買行動がスマートフォンなどの電子機器によるものが多くなり、SNSやインターネット上の広告などから商品認知をする機会が増えたため、ただペルソナ設定を行うだけでは顧客の行動把握が不十分になりました。
効果的なマーケティングを行うために、特にWebマーケティングの分野ではアクセス解析ツール(Google Analytics)などを使用して顧客の行動を分析することが必須となったのです。
こうして得られた情報を「顧客の行動段階別」に整理し生まれたのが「カスタマージャーニー」になります。
ではカスタマージャーニーをマーケティングに取り入れるメリットを見ていきましょう。
ペルソナの行動を時系列で把握できる
ペルソナの日々の行動や、行動段階ごとの思考・感情などもカスタマージャーニーに必要な要素として組み込まれるため、より詳細な顧客の行動の全体像を捉えることが可能になります。
マーケティング戦略における成功は、顧客の行動をいかに正確に捉えることができるかで決まるといっても過言ではありません。
フェーズ別の施策を打ちやすい
カスタマージャーニーでは顧客の行動を段階別で把握するため、ある段階にいる顧客の悩みや不安を取り除くための施策を打ちやすくなります。
先ほどの「女性1人旅の宿泊先選び」を例にすると、過去に利用した女性ユーザーのレビューを上位表示することが顧客のカスタマージャーニーを促進させると判断し、施策を打つことが可能です。
もし中期的な施策を考えるのであれば、「安全であることを保証するラベル表示」なども技術面からのアプローチとして有効でしょう。
施策やサービスの質向上につながる
上述したことにつながりますが、カスタマージャーニーでは顧客の行動の全体像が掴めるため、顧客目線のサービス提供や施策の実現可能性が高まります。
そういった意味でも、顧客アンケートや評価システムなどの導入は進めていきたいところです。
可視化するカスタマージャーニーマップの作成
カスタマージャーニーを作成する時は、そのままカスタマージャーニーマップを作成するのが手っ取り早いといえます。
ペルソナの設定をした後に、ペルソナの行動を想像してマッピングしていきます。
文章ではなくマップにすることにより、直感的にカスタマージャーニーを把握することができるため社内共有などに役立ちます。
カスタマージャーニーマップを構成する要素については後述しますが、作成ツールもあるため気になる人はこちらのサイトを参考にしてみて下さい。
使うのは「縦軸」と「横軸」
カスタマージャーニーマップは「縦軸」と「横軸」で構成されます。
横軸には「認知」「興味・関心」「比較検討」「購入」を書き、縦軸には「行動・タッチポイント」「思考」「感情」を記入し、簡単な表を作ります。
サービスによって各項目は微妙に変化するため、色々なカスタマージャーニーマップを見て近いモデルがないか調べてみましょう。
文章より図を多用する
カスタマージャーニーマップの目的はペルソナの行動を詳細に書き切ることではなく、あくまで直感的に把握しやすくするためのものになります。
したがって文章よりは図・絵を多用するようにしましょう。
文章も短く簡潔に書くとスッキリします。
カスタマージャーニーマップ作成は社内共有や施策立案に最適
カスタマージャーニーマップの作成は社員研修やセミナーなどの場で行うと効果的です。
まずは社内で作成し、顧客アンケートなどで情報の修正を行いましょう。
出来上がったカスタマージャーニーマップから効果的な施策が浮かんでくることも多いため、ペルソナ別に複数のカスタマージャーニーマップを作成してもいいかもしれません。
(画像はUnsplashより)