Webマーケティングの分野でよく耳にする「グロースハック」や「グロースハッカー」という言葉の意味を理解しているでしょうか。
グロースハックとは「ユーザーデータを分析し、継続的な改善を続けながらサービスの成長を達成する考え方」のことを指し、「実際の改善を担当する人」がグロースハッカーです。
グロースハックでは分析ツールを利用し「コホート分析」や「ファネル分析」といった分析法を用いることで、ユーザーがサービスの「どの段階で離脱しているか」を把握・改善を進めるのが特徴です。
グロースハックのポイントはコストをおさえたサービス改善とされています。なぜなら、Webサービスが次々と新しいものに更新されていくからであり、サービスそのもののライフサイクルが短いからです。
つまり、グロースハッカーは既存のサービスの改善を第1の目的としながらも、他サービスや新サービスの積極的な情報収集が必要になることが分かります。
このように、グロースハッカーにはWeb・IT業界ならではの事情を考慮した「迅速かつ効果的な改善」が求められるといえます。
Web制作・運用担当者は運用フェーズで失敗しないためにも、Web制作の現場で欠かすことのできないグロースハックの要点をおさえながら、フレームワークとなる「AARRR(アー)」について理解することが重要です。
グロースハックが注目される理由
グロースハックが注目されている理由は、先述したようなWeb・IT業界の厳しい環境にあります。
現在のWeb・IT業界では、サービスの認知拡大やユーザビリティの向上に多額のコストを注ぎ込むのではなく、始めから「短命」であることを見越してサービス改善を行っていくことが重要と認識されているのです。
「ディスプレイ広告」のメリットは、広告を配信できるサイトが無数にあることです。広告枠を持つサイトであれば自社の広告を出稿することができるため、幅広く多くの人に広告を見てもらうことも可能です。
マーケティングとグロースハックの違いとは?
両者の違いを見い出すポイントは、グロースハックの領域がマーケティングよりも広いところにあります。
従来のマーケティングは極端にいえば「サービスが売れるための仕組み作り」を実行することにありました。
一方のグロースハックは従来のマーケティングの売れる仕組み作りを行うと同時に、「サービスそのものに成長させるための変更を加えていく」ことにフォーカスしています。
つまり、従来のマーケティングが「サービスの外側」で行うものだったのに対し、グロースハックは「サービスの内側」で改善を実現するものなのです。
このグロースハックを実現するためには「Web解析能力」「マーケティング知識」「プログラミング能力」が必要となるため、マーケッターとエンジニアの能力を備えたグロースハッカーが必要となります。
ここで注意しておきたいのは、グロースハックはグロースハッカーがいなくても実施できるということです。
グロースハックで重要なことは、サービスそれ自体に拡散・成長する仕組みを作ることであり、その仕組み作りがユーザーデータの裏付けに基づいて実行されていれば問題ありません。
Facebook・Twitter・Instagram・LINEなど、SNSに配信する広告が「SNS広告」です。SNSは媒体により、利用するユーザーの年代層や嗜好が異なります。
したがって、Web制作・運用担当者はグロースハックを行うための「Web解析者」や「Webマーケッター」、「エンジニア」といった人材が自社リソースにあるかを知っておく必要があります。
そしてYouTubeやYahoo!アプリに配信される、動きと音でアプローチする広告が「動画広告」です。
グロースハックは決して1人のグロースハッカーのみが行うものではなく、時にチームとして動く必要があることを覚えておきましょう。
グロースハックに必要な「AARRR」フレームワーク
グロースハックを行う際に必要な思考の枠組みとして「AARRR(アー)」というものがあります。
広告を運用しようとすると、やるべき内容や検討すべきことが多すぎて分かりにくいものです。広告運用で成果を上げるためには、次の5つのステージに分けて考えてみましょう。
AARRRは「Acquisition(ユーザー獲得)」「Activation(活性化)」「Retention(継続利用)」「Referral(口コミ)」「Revenue(収益の最大化)」の頭文字をとった略語です。
グロースハックのマーケティング手法はAARRRの順序を踏みながら、PDCAのサイクルを高速に回していくことが重要とされています。
まずは、どんなビジネスにおいても必要な「ユーザー獲得(認知拡大)」について見ていきましょう。
A:Acquisition(ユーザー獲得)
サービス立ち上げ時にはそもそもの認知拡大から始めていく必要があります。
より多くのユーザーに認知してもらうことを考えると、SEO(検索エンジン最適化)よりもSNS広告といったSNSマーケティングの方が短期間で効果的な集客が行えるでしょう。
ただしWeb広告にはコストがかかってしまうため、第1段階で求める集客レベルに応じて慎重に判断する必要があります。
A:Activation(活性化)
ユーザー獲得の後は「実際のユーザー行動」を見ていきます。
ユーザー行動の最終目的地であるコンバージョン(購入)に向けて、どのフェーズでユーザーが離脱してしまうのかを「ファネル分析」を使って見ていくことが重要です。
ファネル分析では新規ユーザー獲得以降に発生する諸々のユーザー行動(基本情報入力時、初回チュートリアル時)ごとにファネルを置き、ユーザーの離脱率を可視化することができます。
離脱率の高いポイント(ページ)を見つけた場合はページを構成する要素を複数のパターンに分けて比較検証を行う「A/Bテスト」や、ユーザーがサービスと接する画面「UI(ユーザーインターフェース)」の改善を行うのが一般的です。
R:Retention(継続利用)
ユーザーの離脱率を改善すると同時に取り組むのが「コホート分析」です。
コホート分析とは「時間の経過にともなうユーザー行動の変化」を分析することであり、リピートユーザーの「傾向」や「定着度」を数値で表すことを目的としています。
コホート分析は無料ツールのGoogleアナリティクスでも行うことができるため、ユーザーをセグメント化するなどの工夫を凝らしながら、ユーザーが継続利用するためのサービス改善を考えていきましょう。
R:Referral(口コミ)
第1段階のユーザー獲得と並行して、口コミによる集客を実践していきます。
口コミは多額なコストをかけずにサービスを周知する最も効果的な手法です。また、口コミの信用度は広告よりも高いといわれており、ユーザー定着度が向上するのもメリットの1つといえます。
R:Revenue(収益の最大化)
ユーザー獲得と口コミ、活性化と継続利用をPDCAサイクルの中に落とし込むことで、収益の最大化を図ることができます。
さらにコンバージョン(購入)に至ったユーザーをコホート分析で「高収益」と「低収益」にグループ分けすることで、収益の最大化を効果的に実現するロジックを見つけることも可能となるでしょう。
まとめ
グロースハックは無料のツールや既存リソースを使って実施することが十分可能です。
あまりコストがかけられないサービスでも収益の最大化が図れるように、担当者はグロースハックの成功事例を自社サービスの参考にすると良いでしょう。