新規事業や起業を考えている方にとって、「新たに市場に出す製品やサービスは、消費者の需要を満たしているのか?」ということが気になるでしょう。需要の予測が外れた場合、今後の事業継続が困難になることも十分にあり得ます。

「この製品は必ず売れる」「このサービスは消費者に受け入れられる」と強い想いは非常に重要ですが、想いだけでうまくいくほど現実は甘くはありません。

そこで今回は需要を予測する有効な手段として、統計的手法について説明します。

今回説明する統計的手法は基本的な手法です。実際の計算は、表計算ソフトでもできるので、ぜひビジネスに役立ててください。

需要予測とは

需要予測とは、名前の通り過去や現在の状況から将来の需要状態を予測することいい、大きく分けて2種類の方法があります。

個人の経験による予測

個人の経験による予測については、過去の経験から感性によって予測します。過去に多くの経験をしている方については、比較的高い精度での予測ができるでしょう。しかし、経験の浅い方や経験のない方の予測の精度は低くなります。

統計的手法による予測

市場領域が狭ければ経験による予測もできますが、市場がグローバルな領域まで広がると経験による予測には限界があります。一方、統計的手法による予測は、様々なデータを使って予測を行います。

データについても、データバンクなどから特別な情報を入手することで、これまで経験のない領域について予測することができます。

しかし、統計的手法といわれてもどのような方法があるのか、わからないことも多いでしょう。統計的手法であるため、計算で予測をしますが、計算結果を判断するのは人になります。統計的手法を使う場合でも、計算結果の意味を理解していないと、正しい予測をすることはできません。

統計的手法のよいところは、データが同じであれば、誰が計算しても同じ結果になります。プレゼンテーションなど第三者に説明する場合にも、経験による予測より説得力があるといえます。

需要予測の手法

具体的に統計的手法による需要予測について説明します。ここでは3つの代表的な手法をご紹介します。

移動平均法

平均値を計算するデータの範囲を少しずつずらして計算する方法です。年月日や時間など、ある期間ごと変化する需要予測を行う場合に有効な方法です。一般的な平均値とちがう点は、データに変動がある場合、その変動に平均値が追従するところです。

ふつうの平均値では、データが増えるほど変動したデータが含まれていても、平均値に与える影響は少なくなります。しかし、需要予測のような変動の影響を考慮する必要がある場合は、変動した影響を反映させなければなりません。

移動平均法では、計算するデータの範囲をずらすことによって、変動したデータの影響を反映させることができます。移動平均法を行うポイントは、平均値を計算する範囲をどのように決めるかが重要になります。

計算する範囲を広くした場合、データが変動する影響は少なくなります。逆に、計算する範囲を狭くした場合、データが変動する影響は大きくなります。

指数平滑法

過去の実績値と予測値に重み付けをして、予測する方法です。具体的には、過去の実績をどの程度重視するのか、予測値と実績値の差をどの程度反映させるのかによって決まります。式は次のようになります。

今期予測値=前期予測値+α × (前期実績値-前期予測値)( 0<α<1 )

POINT
  • 指数平滑法のポイントは、どのように重み付けを決めるかということです。重み付け係数は、平滑化指数といいます。

平準化指数(α:アルファー)は0から1までの数値で、1に近い値ほど過去の実績を反映した予測になります。

平滑化指数をどのような数値にするかが重要です。特別な理由があって、前期の実績値が大きかった場合、平滑化指数を小さくして予測します。逆に、販売状況が好調になる見込みがあれば、平滑化指数を大きくして予測します。

指数平滑法で注意しなければいけないことは、予測値と実績値の差が大きくなってきた場合は、誤差も大きくなっていくので予測方法を見直す必要があります。

回帰分析

因果関係がある2つの値の関係を1次式の直線で表し予測する方法です。

1次式の直線とはy = aXx+bという式で、xとyの関係から予測します。

POINT
  • 回帰分析のポイントとしては、因果関係のあるデータでなければ、予測の精度は低くなります。因果関係については、相関を計算することで知ることができます。相関の計算で1に近いほど因果関係があることになります。
  • 計算は機械的に行えますが、因果関係を正しく検証することが大切です。回帰分析で、y = a × x + bという式が求めた場合、aの値がプラスとなればxが増えればyも増える傾向があります。逆に、aの値がマイナスとなればxが増えればyは減る傾向となります。

上記以外にも、統計的手法はあります。経済アナリストや証券会社では、より複雑な計算をして将来の株価等を予測しています。

上記の統計的手法によって、需要予測を行うことはできますが、データ範囲や係数の決定や因果関係の検証は、人が決定しなければなりません。また、統計的な計算で求めた値に対する判断も人がしなければなりません。

まとめ

統計的手法を使って需要を予測する

統計的な手法によって需要予測を行うためには、データが必要です。当然ですが、データが正しくないと正しい需要予測ができません。新規事業をはじめようとする方は、需要予測をするためのデータが足りないかもしれません。

データを入手する方法として、データバングなどから購入することができます。しかし、新規事業に関するデータがない場合があります。その時は、調査を依頼するか自分で調べるしかありません。

自分で調べる方法として、MVP(Minimum Variable Product)という方法があります。

仮説をたて、MVPによる検証を行うことで、短期間に消費者の需要を予測することができます。

需要予測はあくまで予測ですので、世の中の状況が変われば一変することもあります。

MVPを活用し、世の中の動向をふまえながら、柔軟な需要予測をするようにしてください。

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この記事を書いた人

代表取締役 Maki Aman

デザイナー、エンジニア、マーケターの経験を活かし、経営戦略からWEB企画(制作・開発・広告) までを幅広く担当。企業コーポレートサイト、ロゴデザイン、ブランディング、開発ディレクション、アニメーションなど現場でのデザインと実装など対応領域は多岐にわたる。新規事業立ち上げやコンサルティングの経験も豊富。3児の母。 15 年間、さまざまな企業のサービス起ち上げ、ブランディング活動に携わってきました。さまざまな立場や環境によって人の目線は変わるものですが、どのような角度から見たときにも、企業の明るいビジョンが描ける立体的な活動がしたいと思っています。 透きとおった心で、明るい未来を描き、美しい世の中をデザインするために活動中。 ・オルタナグリーンオーシャン大賞受賞 ・DXからXRの世界へMinimumVariableProduct(著書)