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良いピボットと悪いピボット?ピボットのリスクや注意点について
著者名:Maki Aman
リーン・スタートアップにおいて、アイデアの仮説が顧客のニーズにフィットしないときは、企業はピボット(方向転換)を検討するタイミングとなります。
最初から完璧な商品やサービスを作り出すことは非常に難しく、企業は改善を何回も繰り返して、顧客への価値を提供できるプロダクトをつくっていきます。
しかしこのピボットは、好きなときに好きな回数を実施できるわけではなく、リスクもあることを理解しておく必要があります。
そこで今回はピボットのリスクやリスクの軽減、回避の方法や注意点についてをご説明します。
リーン・スタートアップとは
リーン・スタートアップでは、顧客にインタビューやアンケートなどをおこなうことでニーズを把握します。そして顧客のニーズを満たすためにアイデアの仮説を立てます。
次にできるだけ無駄を省いた実用最小限のプロダクトであるMVP(Minimum Viable Product)を開発します。
MVP作成したら、顧客に使用してもらいフィードバックを集めます。このデータをもとに仮説の計測をします。計測・検証で得た顧客の情報により学習し、必要であれば改善を繰り返します。
MVP(Minimum Viable Product)
リリースする頃には競合に先手を打たれていたり、ニーズが変わっている可能性
もし間違っていたらプロダクトの方向性を早期に変えることができる
この仮説・構築→計測・検証→学習・改善のサイクルを繰り返すことで、顧客への価値あるプロダクトを提供します。
リーン・スタートアップでは、はじめからフル機能を実装するのではなく、迅速かつ低コストで実用最小限の製品プロダクトをリリースしながら、顧客の要望に添った、より良い製品を開発します。
改善してもアイデアの仮説とのズレが解消せず、顧客の要望を満たすことができない場合は、ピボット(方向転換)することもあります。
ピボットのリスク
方向転換を意味するピボットの決断は、企業戦略や市場の適合性を確認するプロセスといえます。ピボットが成功への道標と考えると、「ピボットをしない」ことがリスクになります。
また「ピボットをする」を決断する場合は、成長や成功への道標を発見できないリスクがあるともいえます。
他にもピボットには、“しないリスク”と“するリスク”の両面があるということを認識しておくことも重要です。
ピボットには費用がかかる
SNSサービスを提供しているVotizen社の例で、ピボットに至るケースとコストの変遷を紹介します。この企業では、アイデアの仮設からMVPを制作したとき120万円の費用でした。その結果、MVPの閲覧者が5%の登録者、アクティブ顧客が登録者の17%と結果はよくありません。
改善の結果は、MVP利用閲覧の17%の登録者、アクティブ顧客8%紹介6%でした。期間は8ヶ月で200万円の費用をかけましたが、結果よしとはいえません。Votizenはピボットを決断し、1回目のピボットに4ヶ月で300万円の費用をかけ、MVP利用の42%の登録者、アクティブ顧客83%定着21%紹介54%しかし、売上は1%です。
さらに1ヶ月の期間でピボットを繰り返して、最終的に利用者の51%の登録者、アクティブ顧客92%定着28%紹介64%売上は11%となり、Paypal創業者から150万ドルの資金調達を達成しました。このようにピボットは、プロジェクトそのものを大きく変更するため、一定の費用がかかります。
“ピボットする・しない”の見極め
スタートアップの企業にとっては、ピボットがビジネスモデル再構築の有効なツールとなります。
しかし、スタートアップ企業が正しいピボットをできないケースもあります。それでは、良いピボットと駄目なピボットの差とは、何でしょうか?
良いピボットと駄目なピボットをみていきながら、“ピボットする・しない”の見極めのポイントについて説明します。
駄目なピボット
悪い点
- アイデアの仮説の検証をやりきっていないうちにピボットするケースです。駄目な理由として、やりきっていないケースでは、チームメンバーの一体感がなくなり、モチベーションが下がり、作業効率も悪くなります。
- 課題をみつけ学習としての確証を得たにもかかわらず、改善しないケースです。駄目な理由は、エンジニアなどのリソースがないために安易にピボットに逃避してしまいその結果ピボットに効果が出ない状況に陥ります。
- 顧客の要望によるものでなく、主観的な感覚でピボットをするケースがあります。駄目な理由は、定性データと定量データを活用しないために論理性に欠けてしまうことにあります。これらのようにピボットを安易におこなわず、顧客の要望を慎重に分析して、ピボットするしないを決定すべきでしょう。
良いピボット
良い点
- やりきること
- 客観的データに基づくこと
- メンバーの納得感があること
良いピボットを施策する条件として、次の点に留意しましょう。
上記の3点は良いピボットをおこなうための必須項目です。たとえば、AARRRによるプロセスやKGI/KPIの指標設定を慎重におこなうなど、何をピボットすべきかチームメンバー全体の納得感を得てすすめることが重要です。
エニィでのピボットの考え方
エニィでは元々、すべてのプロジェクトをMVPの方針に沿って、計画立てています。ピボットのタイミングはスタートから軌道に乗ったプロジェクトは必要ありませんが、しばらく赤字になる見込みがある場合は、シビアにピボットの位置を見ておく必要があります。
- ロードマップ化
- KPI・キーワード設計
- 予算・ROI算出
- カスタマージャーニー
まとめ
リーン・スタートアップにおけるピボットの場面では、ピボットそのものにもリスクがあることを考慮に入れて、慎重に判断しなければなりません。また、ピボットには費用がかかることを実例で説明しました。
ピボットする・しないの判断とともに、ピボットの駄目な例を避け、ピボットするときは、あくまでも客観的なデータに基づき、チーム全員の納得感を得ることが重要です。
これらのようにピボットの判断と良いピボットの留意点を念頭におき、慎重におこないましょう。
デザイナー、エンジニア、マーケターの経験を活かし、経営戦略からWEB企画(制作・開発・広告) までを幅広く担当。企業コーポレートサイト、ロゴデザイン、ブランディング、開発ディレクション、アニメーションなど現場でのデザインと実装など対応領域は多岐にわたる。新規事業立ち上げやコンサルティングの経験も豊富。3児の母。
15 年間、さまざまな企業のサービス起ち上げ、ブランディング活動に携わってきました。さまざまな立場や環境によって人の目線は変わるものですが、どのような角度から見たときにも、企業の明るいビジョンが描ける立体的な活動がしたいと思っています。
透きとおった心で、明るい未来を描き、美しい世の中をデザインするために活動中。
・オルタナグリーンオーシャン大賞受賞
・DXからXRの世界へMinimumVariableProduct(著書)
「実際にリーン・スタートアップを実施にするには、最適な人材が不足している」「ピボットの判断に自信がない」といった悩みをもっている企業の方は、ぜひリーン・スタートアップのプロがいるエニィにご相談ください。